様々な表情が魅力的な宝石 スフェーン

様々な表情が魅力的な宝石 スフェーン

2021年12月、全国宝石卸商協同組合は63年ぶりに誕生石を改訂し、スフェーンは新たに7月の誕生石として追加されました。

7月の誕生石といえば、赤色のルビーが有名ですが、なぜスフェーンも7月の誕生石となったのでしょうか。

誕生石は、発見者や命名者にちなんで何月にするか決められます。スフェーンが新種の鉱物として発見されたのは1787年のこと。発見者は、ジュネーブ共和国の科学ジャーナリストで自然哲学者のマーク・オーガスト・ピクテ。そして彼の誕生月は7月です。また、スフェーンの輝きが夏の森のような美しい色合いを持つことも、7月の誕生石となった理由の1つです。

 

石言葉

スフェーンの石言葉は、「純粋」・「永久不変」・「成功」・「幸運」・「富」・「目標達成」です。

目標達成に向けて背中を押してくれ、成功へ導いてくれるような力を求める人にもおすすめの宝石といえるかもしれませんね。

 

特徴

スフェーンはチタンを含むケイ酸塩鉱物で、鉱物名はチタナイトと言います。

スフェーンという名前は、その特徴的な「くさび形」をした結晶の形に由来します。ギリシャ語で「くさび」を意味する「スフェノス(sphenos)」が語源とされています。

 

産地

スフェーンはアメリカやインドなど、様々な地域で産出されていますが、高品質なスフェーンが多く採れる産地は限られています。そのため、マダガスカルやロシア、パキスタン、ミャンマーなどが主な産地に挙げられます。

ロシアで採れる一部のスフェーンは、力強いファイアが特徴の「ロシアンスフェーン」と呼ばれるものもあります。

 

スフェーンは、保有する成分によって個体の色が異なりますが、主に黄色から緑色の色合いがあります。黄緑色のスフェーンは「マスカットグリーン」「ライムグリーン」などと表現されることもあり、爽快感のある美しさが魅力です。

鉱物名をチタナイトと呼ばれる通り、スフェーンはチタンを含みますが、その含有量が多くなると暗い色調になります。一般的にアクセサリーやジュエリーとしてのスフェーンは、鉄分を含む黄緑色が多く、マスカットグリーンやライムグリーンカラーの爽やかな色を見せてくれます。一方、クロムを多く含有しているスフェーンは深みのあるグリーンに輝き、より価値があるとされています。

また、一部のスフェーンでは多色性が見られたり、カラーチェンジするものもあります。カラーチェンジは太陽光や白熱灯などの種類の違う光源を当てたときに異なる色を見せる現象です。太陽光ではグリーンに見え、白熱灯の下では赤く燃えるような色に変わるものもあります。

 

高い屈折率とファイア

ファイアとは、宝石用語で「虹色の輝き」のことを指します。スフェーンの大きな特徴のひとつは、時にダイヤモンドよりも激しいファイアを見せる宝石であるという点です。

スフェーンはダイヤモンドクラスの屈折率を持ちます。そのため、光を分散させる力も強く、力強いファイアを放つ個体を見ることができます。一般的に濃いグリーンカラーの地色を見せるスフェーンは、ファイアが薄まる傾向があり、イエローカラー系のスフェーンの方が美しいファイアを確認することができます。

 

硬度と希少性

ダイヤモンドの輝きと比較されるほどのスフェーンですが、硬度が低く、傷つきやすいというという特徴があります。モース硬度は、鉱物の硬さを表す尺度の1つですが、ダイヤモンドのモース硬度は10です。一方、スフェーンのモース硬度は5-5.5と、2つを比較すると大きな差があります。

もともとスフェーンは、宝石には適さないと考えられていましたが、この低い硬度がその理由です。しかし、素晴しい美しさを見せるスフェーンは、その硬度の低さにも関わらず、今では人気宝石の地位を獲得しました。傷つきやすく割れやすいスフェーンは、自然界で大粒の結晶として見つかることはあまりありません。そのため、希少性も必然的に高まり、希少価値の高い宝石となっています。

更に、ファイアが強く現われるスフェーンは貴重です。スフェーンはその硬度の低さから、インクルージョンを多く含むという特徴もあります。それがファイアの輝きに影響を与えてしまい、力強いファイアが見られるスフェーンはより希少価値が高くなります。

 

多色性と高い複屈折性

スフェーンには多色性という特徴もあります。多色性とは、見る角度によって異なる色を見せる現象のことです。これは、一部の鉱物が持つ結晶の特性による光学現象のひとつで、単一の色やグラデーションとは異なる発色をします。グリーン系のスフェーンであれば、見る角度を変えると黄色に色づいたイチョウのような色に見えたりするものもあり、同じ個体でも印象が変わって見えます。

また、スフェーンには複屈折性もあります。石の内部に光が入り込むと、その光は屈折しますが、その際に2つの光線に別れるという性質です。これによって、スフェーンの輝きに柔らかさが加わり、優しさを感じられます。

 

魅力

スフェーンの大きな魅力は、様々な表情がある点です。虹色の輝きを見せるファイアや多色性、またカラーチェンジなど、スフェーンの美の印象はひとつではありません。

また、力強く豪華絢爛な輝きを放つものもあれば、優しい輝きを放つものもあります。そのため、身に着けるシーンやその時の気分によって、個性の異なるスフェーンを選ぶ楽しさも味わうことができます。

 

 

7月の誕生石に選ばれ、より注目度が高まっているスフェーンは、これからもっと多くの人々の手に渡り、その魅力によって様々な物語を作っていくことでしょう。

ぜひ一度手に取っていただき、その魅力を肌で感じてみていただければと思います。

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